上は長野県の唐沢鉱泉の朽木上のコケを雨の中で撮った写真です(撮影日:2022.9.3.)。 写真のようなサイズの小さめの濡れたコケの同定はほんとうに難しく見当もつかなかったのですが、蒴がついていたので少し持って帰りました。
適度に湿った状態にしたのが上の写真で、蘚類と苔類が混じっています。 調べた結果は、蘚類はイトハイゴケ、苔類はタマゴバムチゴケのようでした。
今回はこのうちのイトハイゴケ Pylaisiadelpha tristoviridis の観察結果を載せることにします。
茎を1本取り出してみました(上の2枚の写真)。 茎からは枝が羽状に密に出でています。 葉の上部は強く鎌状に曲がっています。 茎葉の長さは 1.3mm前後ですので、小形のハイゴケ属だと思いました。
平凡社の図鑑のハイゴケ属の検索表は、茎の横断面で表皮細胞がその内側の細胞と同じか大形で透明か、から始まります。
上が茎の横断面で、中心束が無いことは明らかですが、表皮細胞については迷ってしまいます。 表皮細胞は場所によって分化していないようにも見えますし、分化して大形で透明な細胞になっているようにも見えます。
他の観察結果から、このコケはイトハイゴケだと思っているのですが、このような中間的な茎の表皮細胞を持つのも、この種の特徴の1つかもしれません。 ちなみに平凡社の図鑑では、本種の表皮細胞は小形となっています。 そして本種は平凡社ではハイゴケ科ハイゴケ属となっていますが、現在ではコモチイトゴケ科コモチイトゴケ属とされています。
上は葉です。 茎葉と枝葉は、大きさ以外の形質はほぼ同じように思います。 中肋は不明瞭です。 下は上の左下の葉の基部です。
基部には黄褐色の細胞が並んでいます。 翼部にはやや大型でやや厚壁の透明な細胞が数個あり、その上に1~2個の方形の細胞があります。
上部の葉縁には小歯があります(上の写真)。
上は葉身細胞です。
◎ イトハイゴケはこちらにも載せています。
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