2015-12-27

ジョウレンホウオウゴケ


 写真はジョウレンホウオウゴケ( Fissidens geppii )でしょう。 水の滴る崖に生育していました。 環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類(VU)となっています。

 胞子体は後に回して、まずは配偶体の様子から見ていくことにします。



 上に2例の茎の長さを載せましたが、他のものもこの程度でした。 平凡社の図鑑の記載、「配偶体は長さ3~9mm、4~19対の葉をやや密につける。古い葉はやや赤味か黄味を帯びる。」と合致します。 葉の長さも、図鑑に記載されている1.2~2.7mmと合致します。


 1枚の葉に注目すると、背翼の基部は狭く、葉の基部は茎の上に細く下延しています。
 (ホウオウゴケ科の葉の各部の名称などについては、チャボホウオウゴケを見てください。)


 上は葉の基部を拡大したものです。


 上は2枚の偏光板を直交ニコルにして撮ったもので、細胞壁が白く写っていて、細胞壁の多い部分つまり中肋と舷が目立っています。 中肋は強く、葉先に達するか、短く突出します。 舷は下でも書くように葉の全周で非常に強いのですが、葉先近くで消えています。 下は普通の光学顕微鏡像で上記のことを確認するために葉先近くだけを撮ったものです。


 細胞は方形~不規則な六角形です。


 上の写真は、舷の一部の偏光顕微鏡像で、下方が葉身です。 舷は断面では2~3(まれに5)細胞層とのことですが、このことは断面を作らなくても上の像からも納得できます。

 以下は胞子体の様子です。



 蒴は常に茎の頂につきます。 蒴柄はカーブしていますが、蒴は曲がらず、ほぼ相称です。 2枚の写真を比較してわかるように、蒴歯は乾くと開きます。


 蒴歯は、ホウオウゴケ科全体にあてはまる特徴として、1列で16本なのですが、1本の蒴歯が複数に裂けますので、本数は基部に注目して数える必要があります。 写真のように乾燥して蒴歯が大きく開いた状態では、写真としてはおもしろいのですが、蒴歯がとても多く見え、数えるのが難しくなります。

(2015.12.22. 堺自然ふれあいの森)

こちらには蓋のついた蒴や葉の断面などを載せています。