2016-10-09

カガミゴケ


 9月下旬に堺自然ふれあいの森で撮ったカガミゴケ Brotherella henonii です。 昨年も8月下旬にほぼ同じ場所でもう少し蒴の若い状態のカガミゴケを撮っている(こちら)ことからすると、毎年同様の時期に胞子体を形成するようです。


 平凡社の図鑑では蒴柄の長さは 1.5~2.5cmとなっていて、図鑑の倍ほどの長さがあるのですが、採集場所が薄暗い谷底の水の流れのすぐ近くの朽木という生育環境が影響しているのだと思います。


 前回も葉を載せていますが、特徴確認のために再度載せておきます。


 上は葉身細胞です。 平凡社の図鑑では、長さ 100-130μm、幅 4-5μmとなっていて、上の写真の最小目盛が 10μmですから、ほぼ一致しています。

 今回は蒴の観察にちょうど良い時期でしたので、少し丁寧に観察してみました。


 上は左から、帽のある蒴、帽が取れて蓋のある蒴、蓋が取れて蒴歯の見えている蒴です。 25枚の写真から深度合成(=焦点合成)しています。


 カガミゴケの蒴歯は、外蒴歯と内蒴歯各16本です(上の写真)。
 外蒴歯は乾湿によって閉じたり開いたりするのですが、樹幹のコケの蒴は湿ると開くものが、地表のコケの蒴は乾くと開くものが多いと言われています。 これは樹幹のコケは樹幹を伝う水で胞子を散布しようとするのに対し、地表のコケは風に胞子を載せて散布しようとしているからだと考えられています。 ちなみにこのしくみは、水を吸収しやすい物質が朔歯の表側にあるのか裏側にあるのかによって決まります。
 カガミゴケは樹幹のコケとは言えないのですが、息をしばらく吹きかけ続けていると、外蒴歯が少し開いてきました。 上はそうして撮った写真です。 このように撮影中に変化するものは深度合成できませんが、蒴歯以外の部分がボケることで、蒴歯が印象的な写真になりました。


 外蒴歯と内蒴歯の形態的な違いを顕微鏡で観察するために、蒴歯にくっついている胞子を掃除していると、蒴歯がバラバラになってしまいました。
 上の写真で、白っぽく太いのが外蒴歯、褐色を帯びて特に先端が細くなっているのが内蒴歯で、右上に見える写真では縦に走っている細いものは間毛でしょう。 緑色をした丸いものは胞子です。
 外蒴歯と内蒴歯をもっと明瞭に区別できないかと思い、上と同じ所を偏光(直交ニコル)で撮ったのが下の写真です。 やはり外蒴歯と内蒴歯では偏光下での性質が異なるようで、外蒴歯が白く光っています。


(2016.9.27. 堺自然ふれあいの森)