これも大阪市立自然史博物館で行われた8月21日の標本同定会で見てもらったコケです。
写真は拡大して撮っていますので、葉が鋭く尖っているのが分かりますが、肉眼的にはクラマゴケなどと雰囲気がよく似ています。
裏側から(=腹面から)撮ると、側葉が左右に規則正しく並び、腹葉があり、クジャクゴケ科であることは分かります。 最初はこれまで見たことのあるコキジノオゴケなどと同じキジノオゴケ属( Cyathophorella )かと思いました。 しかしキジノオゴケ属はほとんと分枝しませんが、上の写真の左上や1枚目の写真の左中央などには分枝が見られます。
絡まっているコケをほぐしてみると、上の写真のように、分枝はより明らかになります。 しかし枝の広がり方はヒメクジャクゴケなどクジャクゴケ属のそれではありませんし、ナゼゴケ属とも異なります。 となると、残るはキダチクジャクゴケ属となり、この属の日本産はキダチクジャクゴケ Dendrocyathophorum paradoxum 1種です。
葉は枝先に向かうほど小さくなり、大きさはさまざまですが、キジノオゴケのような大きさの葉は見当たりません。
腹葉の間からは無性芽が見えるのですが、平凡社の図鑑にはキダチクジャクゴケの無性芽に関する記載はありません。
上は腹葉を取り去って無性芽の様子を見たものです。
上は側葉です。 中肋ははっきりしませんが、すくなくとも長い中肋はありません。 葉の上部には歯がありますが、平凡社の図鑑では、側葉はほぼ全縁となっています。
側葉の縁には不明瞭な舷があります(上の写真)。
上は腹葉です。 中肋は短く、弱い舷があります。
(2016.7.13. 京都市 西芳寺川)