この記事は、Part1の 2013.6.16.からの引っ越し(一部変更)に、屋久島の内容を加えたものです。
ホウロクイチゴ Rubus sieboldii は、暖地の海岸近くに生える大きく広がる常緑低木で、伊豆と紀伊半島以西に分布します。 写真は 2013.6.16.に和歌山県の友ヶ島で撮っています。
茎はどんどん横に伸び、地面に接した所で根を出します。 上は茎の先端付近です。 写真ではフユイチゴに似ているようにも見えますが、葉はフユイチゴよりずっと大きく、いかにも潮風に対しても水分を奪われにくい丈夫な印象を受けます。
上は茎の先端付近を拡大したものですが、茎にも葉柄にも褐色綿毛が密生し、棘がたくさん生えています。 上の写真では分かりませんが、葉の裏にも葉脈上に棘が並んでいます。 友ヶ島にはタイワンジカが野生化しているのですが、これだけ棘があれば、シカも食べるのをためらうのでしょう。
花は主に4~5月で、6月中旬ではほとんど花は残っていませんでした。 上は果実とわずかに残っていた花です。 果実の周囲のモジャモジャしたものは、枯れたオシベです。 上の写真では、果実と花の後に花の終ったガク筒も写っています。 果実が熟すのをガク筒が保護しているのでしょう。
果実を横から見ると、丈夫そうな大きなガク筒がほぼ水平に開いて残り、果床を形成しています。 ガク筒に接して後に苞があり、これも補強に役立っているように見えます。 果実を食べてみると、少しねっとり感があり、甘い味がしました。
和名にある「焙烙(ほうろく)」とは、食材を炒ったり蒸したりするのに用いる底の浅い素焼きの土鍋の一種ですが、ホウロクイチゴの名前は、果実を果床から外した様子が焙烙に似ているところからだと言われています。
このホウロクイチゴが屋久島でも見られました。
上が屋久島で撮ったホウロクイチゴです(撮影:2020.3.3.)。 屋久島では道路沿いに海岸からかなり離れた所まで分布していました。
上記のように本種には枝や葉柄や葉の裏面に棘がありますが、ふつう葉の表には棘はありません。 ところが、屋久島のホウロクイチゴには葉の表にも棘があります。 上の写真でも葉脈上に小さな点として棘が写っています。
上は葉の表の棘です。 かなり鋭い棘ですが、たぶんヤクシカの食圧に対抗するための一種の生態形なのでしょう。
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