いろんな苔類が混生している土の斜面に、上の写真のような開裂した蒴がくっついていました。 何の蒴なのか、どの葉につながっているのか、調べてみると・・・
胞子を飛ばし終えて弱っていましたが、チャボホラゴケモドキ Calypogeia arguta でした。 上の写真の①が蒴柄で、右の延長上に蒴がついています。 ②はマルスピウム(marsupium:地中で胞子体の胚を守リ育てる組織)です。 ツキヌキゴケ科(CALYPOGEIACEAE)では、このマルスピウムが発達します。(こちらやこちらではトサホラゴケモドキのマルスピウムを観察しています。)
上のように、まだ蒴柄が伸びきっておらず蒴も開裂していないものもありました。 群落から取り出す時に蒴柄を曲げてしまいましたが、マルスピウムはきれいに取り出せました。 上の場合でも、緑色はかなり薄れています。
ところで、平凡社の図鑑のツキヌキゴケ科の説明には「蒴は楕円体,螺旋状に裂ける。」とあります。 蒴が楕円体であることは上の写真でも分かります。 しかし1枚目の写真を見ても、蒴が螺旋状に裂けているようには見えません。 不思議に思いながらも・・・
上は胞子を飛ばし終えてカラカラに乾いていた蒴です。 とりあえず蒴の細胞でも見ておこうかと、スライドグラスに開裂した蒴を載せ、水を1滴落としました。
カラカラの蒴は水滴に浮いていますので、ピンセットで無理やり水没させようとすると、開裂していた蒴がスーッと閉じ始めました。 慌てて撮ったのが下の1枚です。
たしかに蒴は螺旋状に裂けています。 背景が白色なので、蒴柄は見難いのですが、左下にあります。 胞子を飛散させる蒴の開裂時には、このような状態は一瞬なのでしょうね。
しばらく放置すると下のようになりました。
開裂前の蒴に近い姿にまで戻りました。 そして乾くと、また広がりだしました。 つまりこの蒴は乾燥時に開裂して胞子を飛散させようとしていること、蒴壁を構成している細胞壁の水分の有無による膨張/収縮には再現性がある、ということが分かります。
チャボホラゴケモドキはこれまで何度か載せていますが(こちらやこちらなど)、以下、上の近くにあった、まだ緑の残っているもので観察した顕微鏡写真を載せておきます。
葉は先端が浅くU字型に2裂し、腹縁基部は沿下する |
腹葉は大きく2裂し、側縁に刺歯がある |
葉身細胞は薄壁で、トリゴンは小さく、油体は小粒の集合 |
(2020.3.5. 屋久島 楠川歩道)
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