2020-07-02
コジキイチゴ
写真はいわゆるキイチゴの一種で、本州中部以南に分布するコジキイチゴ Rubus sumatranus です。 果実(偽果)も木の高さも、キイチゴ類のうちでは大きい方です。
上にも書いたように、キイチゴ類の果実は偽果で、「キイチゴ状果」と呼ばれています。 キイチゴ状果を構成している粒の1つずつがほんとうの果実で、この中に種子が1つ入っています。 上の写真でも、ほんとうの果実1つずつにメシベの花柱の跡が残っているのが分かります。
つまりキイチゴ状果は、ほんとうの果実が隣同士互いにくっつきあって1つの果実のようになっています。 多くのキイチゴ類のキイチゴ状果が球形に近いのに対し、コジキイチゴのキイチゴ状果は大きく、楕円体です。
ちなみに、果物のイチゴもやはり偽果ですが、ほんとうの果実は表面についているゴマ粒のようなもので、私たちが美味しく食べているのは、たくさんのほんとうの果実を並べておく発達した花托の部分です。
キイチゴ類でも、イチゴほどではありませんが、花托は発達しています。 偽果を取り除くと後に残る膨れた部分が花托です。
たくさんのほんとうの果実が層状にくっつきあって大きくなれば、その内部は空洞化します。 上はコジキイチゴのキイチゴ状果の内側を見たもので、背景は私の手のひらです。 内部が空洞になっているのが分かるでしょう。
コジキイチゴの名前の由来にはいろいろな説がありますが、有力な説の1つでは、この内部が空洞の偽果の様子が蒸し器として使われた甑(こしき)に似ていることから、「こしきいちご」が訛ったものとされています。
このキイチゴ状果は、甘さは控えめですが、あっさりしていて、おいしく食べることができます。
コジキイチゴの葉は3~11枚ほどの小葉からなる複葉で、茎には棘があります。 またコジキイチゴの特徴の1つに、葉の裏面脈上や茎などの腺毛の多さが挙げられます。 特に茎の赤く長い腺毛は、上の写真のように、逆光で見るとなかなか美しいものです。
下は茎の腺毛を拡大したものです。
※ 上は、Part1の 2014.7.6.の記事を、少し加筆のうえ、こちらに引っ越しさせたものです。