2021-10-21

キッコウハグマ

  下は2013.10.22.に撮影し、Part1の 2013.10.28-29.に載せていた記事をこちらに引っ越しさせたものです。

 キッコウハグマ Ainsliaea apiculata はキク科の多年草です。 茎は直立して高さ10~30cmほどになるのですが、葉は茎の下部にしかつきませんから、花の時期以外は、地面にへばりついている植物のような印象です。 ですから、上を他の植物に覆われると生きていけませんので、木陰であまり他の植物が元気に育たない程度の明るさの所で、しかも小さな多年草ですから、土壌が安定している所で生きている植物のように思います。
 花は9~10月に見られるのですが、閉鎖花が多く、咲いている花はわずかです。

 和名の「キッコウ」は、5角形の葉をカメの甲羅(亀甲:きっこう)の模様に見立てたものです。 また「ハグマ」は、白い花をヤクの尾の毛でつくった飾り(白熊:はぐま)に見立てたものでしょう。 ちなみに、白熊(はぐま)は払子(ほっす)や槍の飾りなどに使われました。 とても高価で、白熊を染めた赤熊(しゃぐま)や黒熊(こぐま)などもあり、兜(かぶと)の飾りや兜の代わりにもされました。 1868年の会津戦争では新政府軍が被っていましたが、これは江戸城に収蔵されていた白熊、赤熊、黒熊を、それぞれ長州、土佐、薩摩の指揮官が着用することで、勝利を誇示したということです。
 閑話休題。
 キッコウハグマはキク科ですから、その花(頭花)は小花(ほんとうの花)が集まったものです。 キッコウハグマの1つの花(頭花)は3つの小花からなっています。

 上が1つの頭花です。 赤く色がついているのは、集葯雄ずい、つまり5本のオシベの葯が輪状にくっつきあったものです。 メシベはこの集葯雄ずいの中心部に隠されています。 頭花は3つの小花からできていますから、集葯雄ずいも3つあります。
 キク科の1つの(ほんとうの)花(=小花)の花弁は5枚です。 タンポポなどでは、この5枚の花弁は横にくっつきあって1枚の花弁のように見えますが、キッコウハグマの5枚の花弁は根本がくっついているだけです。 1つの小花の花弁は5枚で、1つの頭花は3小花からなりますから、1つの頭花の白いひも状の花弁は15枚あることになります。
 キク科の多くの花では、花粉は集葯雄ずいの内側に出されます。 上の写真の集葯雄ずいの先端には孔が見えます。 この孔の奥に花粉が放出されていて、その下にはメシベがあるはずです。
 虫が訪花して集葯雄ずいに触れる代わりに、指で集葯雄ずいの先端を数回軽く叩いてみました。 すると・・・

 集葯雄ずいの先端の孔から花粉が押し出されてきます(上の写真)。 これはオシベに触れた刺激によりオシベの花糸が縮み、相対的にメシベが伸び、集葯雄ずいの内側に出されていた花粉を押し出したことによります。 写真の一番奥(中央)の小花では、白いメシベの柱頭が少し見えています。
 このたくさんの花粉は、虫の体にくっつきやすくなっているようです。 上の集葯雄ずいの先端をよく見ると、溢れ出た花粉の集団が横に流れたようになっています。 これは私の指にくっついて指の移動方向に流れたものです。

 ところで、キッコウハグマの茎にはたくさんの細長いつぼみのようなものがついています。

 上はそのひとつを拡大したものですが、よく見ると先端には冠毛が見えます。 つまりこれはつぼみではなく、花の終わった後です。 キッコウハグマには閉鎖花が多く、この細長いものの多くは閉鎖花だったのでしょう。

 上は同じ場所で一昨年の11月上旬に撮ったもので、冠毛が広がりはじめています。 下はその拡大です。


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