2021-10-27

マスハイチョウゴケ


 北八ヶ岳の湿岩上に育っていた写真のコケ(2021.10.7.撮影)は・・・

 上は乾いた状態です。 下は上と同じものを湿らせて撮っています。

 植物体は褐色を帯びています。 葉は接在して斜めにつき、長さ 0.5~0.9mm、広く開出して背側に偏向しています。 白っぽい仮根が腹面全面に密生しています。
 下は上をもう少し拡大しています。

 葉は凹面状で、先は2裂し、切れ込み部は弓形のようです。 茎の先端の赤っぽい部分は、とてもゴチャゴャしていて、若い小さな葉に無性芽がついているようです。

 上は茎の先端部分です。 葉が集まって厚くなり、透過光が通らず暗くなっていますが、無性芽は赤っぽい色をしています。

 顕微鏡で観察すると、葉縁にも無性芽がついていました。

 無性芽は葉の細胞と同じ色から、次第に赤褐色になっていくようです。

 上は葉で、裂片は鋭頭です。 腹葉はありませんでした。

 上は葉身細胞です。 トリゴンは大きく、ベルカなどは観察されませんでした。

 葉身細胞をもう少し拡大しました(上の写真)。 油体は微粒の集合です。

 さてこの苔ですが、このような形の葉は、いろいろな分類群に見られるうえに、このあたりの仲間の分類は大きく変化していて、同定は私にとってはなかなか難しく感じます。
 とりあえずこれまでに観察したものの中で、白っぽい仮根が密生していて葉身細胞のトリゴンが大きいなど、似たものを探すと、フォーリーイチョウゴケが近そうに思えました。 そこで、その近縁種を平凡社の検索表で調べると、アミバゴケ科のマスハイチョウゴケ Barbilophozia sudetica にたどり着きました。 樋口正信・古木達郎による八ヶ岳の蘚苔類チェックリスト(2018年)にも載せられています。
 ただし、この種も分類は大きく変わっています。 平凡社ではツボミゴケ科の Lophozia  sudetica として載せられていて、科も属も変わっています。

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