写真はオオヒシャクゴケ Scapania ampliata だと思います。 北八ヶ岳の岩上の厚い腐植質の上に育っていました(2021.10.7.撮影)。 大きさはチャボヒシャクゴケより少し大きい程度で雰囲気は似ていますが、赤色を帯びている部分は無く、濁った色をしています。
分枝は、はっきりとは調べていませんが、ムチゴケ型分枝と側面からの分枝が混じっているようです。 平凡社の図鑑では、本種の背片は背方に偏向するように開出すると書かれていますが、背片がそのように開出している場所もありますが、そうでない場所もあります。
背片の長さは約 1.5mm、腹片は 2.0~2.5mmほどの長さがあります。 花被がついているのですが、葉と同じ色で、目立ちません。
上は腹面から撮っています。 仮根は腹片の腹縁基部付近から出て束になって腹面中央を走っています。 腹片の腹縁基部はキールとほぼ同じ高さです。
上は少し乾き気味ですが、腹片がとても細長い印象を受けます。
上は葉です。 茎から切り離すのが難しく、少し破れていますが・・・。
緑の円で囲ったのが背片、赤い円で囲ったのが腹片で、背片と腹片は②のキールの部分でつながっています。 ①は茎との接点です。 上の写真では腹片とつながっていた茎の一部がくっついてきていますが、背片と茎がつながっている所はもっと長くなっています。
葉を広げてみました。 左が腹片、右が背片です。 やはり腹片が少し破れてしまいました。
上は腹片の先で、下は上の赤い四角で囲った部分の拡大です。
葉身細胞はやや厚壁で、葉縁には方形の細胞が並んでいます。
上は腹片の中央部の葉身細胞です。 丸みを帯びた矩形で、葉縁に近い細胞よりかなり大きな細胞です。
上は花被の口付近です。 花被は腹面が凹んでいるため、カバーグラスで押した時に裂け目が入ってしまいました。 下は上の赤い四角で囲った部分の拡大です。
Scapania(ヒシャクゴケ属)は平凡社の図鑑では日本産26種となっています。 似た種も多く、また同じ株でも、背片と腹片の大きさの比など、場所による変異も大きく、なかなか同定は難しいのですが、本種の場合は、この花被の口の複雑さが特徴の1つになると思います。
上は花被を構成している細胞です。
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