写真はヤマトクラマゴケモドキ Porella japonica です。 10月12日に和歌山県橋本市の根古谷で行われたオカモス関西のコケ観察会で見たコケで、岩上にありました。 この谷にはクラマゴケモドキもたくさんありましたが、それより小さく、腹片や腹葉の存在はルーペを使ってやっと確認できる大きさです。
上の2枚の写真はいずれも腹面を撮っていますが、1枚目はTG-6のフォーカスBKTモードで撮った写真(反射光で撮影)をCombineZPで深度合成したもので(顕微鏡は使っていません)、2枚目は光学顕微鏡の対物4倍、接眼10倍で撮影(透過光で撮影)したものです。
葉は大きな背片と小さな腹片に著しく不等に2裂しています。 背片は歯を除いて大きく見ると卵状舌形で、長さは幅の 1.2~1.5倍、先端は内曲しておらず円頭~切頭です。 腹片は茎にくっついてルーペではなかなかうまく観察できませんが、腹縁基部が幅広く、三角形に近い形になることもあります。 腹葉も茎葉の幅よりわずかに広いだけで、茎にくっついているため、ルーペではよほど条件が良くないと観察は難しくなるのですが、これも歯を除いて見ると舌形です。 これらの形質はこの仲間から見分けるポイントになります。 なお、背片、腹片、腹葉に見られる歯の数には変異があるので、歯の多少で他の種と見分けるのは困難です(比較的歯の多いタイプをこちらに、歯の少ないタイプをこちらに載せています)。
平凡社の図鑑のこの仲間(クラマゴケモドキ属)の検索表は、背片と腹片が比較的長くつながっているか、1点(に近い形で)でつながっているかから始まります。 上の写真は明らかに後者でしょう。
上の写真は、腹片の腹縁基部が分かるようにピントを合わせています。 本種の腹片の腹縁基部は長く下延し、その基部末端は背縁基部の高さより低い位置にあります。 これも同定に必要な形質です。 コケとしてはそんなに小さくはないのですが、同定にはやはり顕微鏡が必要になります。
観察していると、上の赤い円で囲ったようなものがありました。 短い枝の先に歯の多いちいさな葉がたくさん重なりあって暗く見えています。 同様のものは、いちばん最初の写真でもあちこちに見られます。
下は上よりもう少しよく伸びた(=よく生長した)もので、重なり合った葉の上半部を、実態顕微鏡の下で取り除いて観察した写真です(倍率は同じです)。
そして、下は上の枝先部分を拡大した写真です(写真の角度は少し変わっています)。
たくさんの葉に保護されていたのは造卵器(群)でした。 本種は雌雄異株ですから、写真のものは雌株だったということになります。
今回は、どのようにすればどのようなことが観察できるのか、観察方法も含めて書いてみました。
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