2020-09-19

ヨコスカイチイゴケ?



 写真は北海道・苫小牧市の公園で撮ったコケです(2020.8.30.撮影)。 枝分かれはほとんどしていません。
 写真の場所は、下にはイボミズゴケが育つ斜面で、雨後でよく分かりませんが、この斜面からも水がしみ出しているように思える所でした。


 長く這う茎から枝が出ています。 斜面から垂れ下がっていた育ち方が原因かもしれませんが、枝は腹側に曲がる傾向があるようです。
 葉は密につき、枝先に向かうほど小さくなっています。 枝の下部の葉は2mm近い長さです。 枝の下部では葉は丸くついていますが、枝先での葉は扁平についています。


 葉は実体顕微鏡で見ると中央部が凹んでいるのですが、プレバラートにすると凹みは分からなくなります。 葉の中肋は短く、二叉しています。 翼細胞はほとんど分化していません。 枝の腹面にある葉は、上の写真のように卵形~広卵形で漸尖して鋭頭、ほぼ左右対称ですが・・・


 枝の側方や背面についている葉は、上のように非相称になったり・・・


 基部の片側の縁が内曲したりします。 上の写真の葉も赤い楕円で囲った部分の葉縁が持ち上がってきています。

 葉先はいずれも急に尖っています。 下はこの葉先付近をもう少し拡大した写真です。


 葉先近くの細胞は葉の中央部の細胞に比較して小さいようです。

 上は葉身細胞です。
 葉の形や細胞を見て頭に浮かんだのはフクロハイゴケ Vesicularia ferriei でしたが、北海道には分布しませんし、もっと枝分かれが多いはずです。 それに・・・


 上は乾いた状態ですが、葉先はほとんど曲がっていません。 フクロハイゴケの葉なら乾くと腹面の方向に曲がるはずです。


 上は茎の横断面です。 表皮細胞は薄壁で、大きさも内部の細胞とほとんど変わりません。  中心束は明瞭です。

 葉の形や細胞の様子からは Vesicularia(フクロハイゴケ属)しか思い浮かびません。 平凡社の図鑑を見ると、この属には4種が記載されていますか、そのうち北海道に分布する可能性のあるのはヨコスカイチイゴケ Vesicularia flaccida のみです。 この種について調べてみると、茎の様子などはよく一致しているようですが、葉はもう少し細長く、特に葉先はもっと長く伸び、中肋はもっと短いはずです。 せっかく調べたので「?」付きで載せておき、コメントを期待したいと思いますが、他の種である可能性も大です。