2種類並んだ上の写真のコケ、どちらもシッポゴケ科のようです。 右側の大きい方はカモジゴケだと思うのですが、今回は左側の小さい方を調べてみました。 調べた結果はチャシッポゴケ Dicranum fuscescens だと思うのですが、今回は最初に写真を並べ、その写真を使って平凡社の検索表をたどった経過を、写真の下に書いてみました。
Fig1 乾いた状態 |
Fig2 乾いた状態 茎に褐色の仮根がある |
Fig3 蒴(壺の下が少し虫に齧られています) |
Fig4 葉先 |
Fig5 葉の中央付近の横断面 |
Fig6 葉の基部 |
Fig7 葉の基部の横断面 中央に中肋が、両端に翼部がある |
Fig8 翼部の横断面 |
【属の検索】
シッポゴケ科にはたくさんの属があり(平凡社では24属)、まず属を絞ります。
A.蒴の蓋は分化する(Fig3)
B.蒴の頸部はないか、もしあっても壺よりずっと短い(Fig3)
C.葉縁に舷がない(Fig4、Fig6)
D.雌苞葉はあまり長くない(Fig1:葉に隠れて目立っていない)
E.葉は卵状披針形~線状披針形(Fig2)
F.中肋は太くても葉基部の幅の2/3以下、横断面でガイドセルがある(Fig6、Fig5)
G.葉の翼部の細胞はよく分化し、大きくてふつう薄壁(Fig6)
H.帽は平滑で下端に毛はない(Fig3)
I.中肋の横断面でステライドは明瞭(Fig5)
J.蒴柄は湿っても屈曲しない。葉は鞘部か披針形~線状披針形に漸尖し、葉身部の大半が中肋で占められることはない
(蒴柄は濡らして変化の無いことを確認、Fig5では中肋は葉の幅の 1/9)
→ シッポゴケ属
【シッポゴケ属の種の検索】
A.蒴は傾き非相称、葉の翼部は断面で2細胞層以上の厚さがある(Fig1、Fig7、Fig8)
B.葉に横じわがない(Fig2、Fig4)
C.蒴柄はふつう1茎に1本。葉身背面は平滑
(蒴をつけているのは2茎のみだったが、どちらも1本。 葉身背面はFig5)
D.葉先は細長く尖る(Fig4)
E.葉は乾くと開出し、鎌状に曲がるか、巻縮する(Fig2)
F.葉身下部の細胞は方形~矩形、細胞壁は内腔より薄い(Fig6)
G.葉身上部の細胞は丸みのある方形~矩形、壁は一様に肥厚、中肋上部の背面に薄板はない
(Fig4:中肋上部の背面には歯があるが薄板はない) → チャシッポゴケ
◎ チャシッポゴケはこちらにも載せています。