2021-12-10

フウリンゴケ@10月

 

 10月に蓼科(標高約 2,300m)で撮ったフウリンゴケ Bartramiopsis lescurii です。 胞子は蒴口と口膜との隙間から出て、既に胞子散布は終了しているようです。 なお、こちらには7月下旬に撮影した、まだ蓋も帽もある蒴を載せています。

 上は実際に生育している状況から、写真を 90°回転しています。 和名は上のようなイメージからでしょうか。

 上の写真は、上が湿った状態で、下は乾いた状態です。 乾くと写真のように強く巻縮します。 葉の長さは、上の場合は葉鞘部を除いて 3.5mmほどです。

 葉鞘部と葉身部との境付近には多細胞の長い毛があります(上の写真)。

 葉縁には大きな鋸歯が並んでいます。

 葉身細胞は方形~矩形で、長さは7~13μmです。

 上は葉の横断面です。 薄板(ラメラ)は中肋上だけですが、葉身部は葉縁に近い一部を除いて2細胞層で細胞は縦に長く、ラメラとの連続性を感じます。

2021-12-09

蒴をつけたオオスギゴケ

 

 林縁の北向き斜面でオオスギゴケ Polytrichastrum formosum が蒴をつけていました。 上の写真の手前には少しスギバゴケも混じっています。

 オオスギゴケのサイズも生育環境によってかなり変化します。 平凡社の図鑑では茎の高さは3~13cmとなっていますから、写真のものはオオスギゴケとしては小形です。
こちらには長く育ったオオスギゴケを載せています。)

 葉もオオスギゴケにしては小形です。 本種の葉には長い鞘部があります。


 上の2枚は葉の横断面です。 薄板の高さは3~4細胞、端細胞は卵形です。

 上は蒴で、稜があります。 外観がよく似ているウマスギゴケとは蒴の頸部のくびれ方で区別が可能で、本種のくびれ方はウマスギゴケのように深くありません。

 多くのスギゴケ属やニワスギゴケ属の蒴口には口膜があり、胞子は蒴歯の隙間から散布されると思うのですが、上の蒴には口膜がありません。 どうやら口膜は蓋にくっついて落ちてしまったようです。 これは本種の特徴なのか、特殊なケースなのか、もう少し観察例を増やしたいと思います。

(2021.10.7. 長野県 蓼科 標高 2,250m)

こちらにはまだ帽のある若い蒴のオオスギゴケや雄器盤をつけた雄株を載せています。 また、オオスギゴケはこちらこちらにも載せています。

2021-12-07

ウロコハタケゴケ

 茨城県自然博物館で行われている第82回企画展「こけティッシュNEW苔ワールド」見学の後、バス停に向かう途中の道路脇にあったウロコハタケゴケ Riccia lamellosa です(2021.11.30.撮影)。 少し乾燥気味なのか、白緑色です。

 Riccia(ウキゴケ属)の中では葉状体の大きさが最大で、上の写真では幅は 1.5~3.5mmwですが、5mmほどになることもあるようです。

 葉状体の縁から白っぽい腹鱗片が鱗のように大きくはみ出していて、これが和名の由来にもなっています。 背面の溝は細い線状です。 なお、上の写真は少しコントラストを強調しています。

 上の写真の溝は胞子体があった跡ですが葉状体の腹面はしっかり残っています。

 上は葉状体の横断面で、背面側部の盛り上がりはほとんどありません。 上の写真では若い胞子体の断面が2個あります。 黒い縦の筋は空気が入ったためで、写真右側の黒いものは土です。
こちらには造精器の様子を載せています。

 上は葉状体の縁付近です。 上から見て白い鱗状に見える部分のつくりがよく分かります。 また、乾き気味の時に葉状体が白っぽく見えるのは、葉状体の背面に葉緑体をほとんど持たない細胞の層があるからでしょう。

 上は胞子で、遠心極面にピントが合っている胞子が2個あります。 遠心極面の直径上には6~7個の網目があります。

 上も胞子で、左側の胞子は求心曲面にピントが合っています。 求心曲面は3本の条溝も不明瞭で、ほとんど網目にならない不規則な突起があります。

2021-12-06

ハタケゴケ

 上はハタケゴケ Riccia bifruca でしょう。 東京都心の日比谷公園で 2021.11.30.に撮影しました。

 葉状体の幅は1~2mmです。 あちこちに胞子体が見えています(分かり易い所を赤い円で囲みました)。 この胞子体は葉状体の背面に盛り上がっているように見えます。
 上の写真では葉状体上にも砂粒などが多く残っているので、洗ってみると・・・

 洗ったために胞子が流されてしまった所もありますが、その部分がきれいに孔になっていて、孔の周囲もしっかりしていますし、孔の底つまり葉状体の腹面もきっちり残っています。 これは胞子体の背面側だけが崩れて胞子が散布されることを示しています。 これらのことも本種の特徴の1つです。
 洗って全体がよく見えるようになると、葉状体基部を中心に赤紫になっているのがわかります。 寒くなると赤紫色に色づくのも本種の特徴の1つです。

 上は葉状体の横断面です。 葉状体内部は、葉緑体の多い廃部と、葉緑体の少ない腹部に分かれています。 葉状体内部に気室はありません。 内部右側には若い胞子体が見えます。 本種の溝の左右(背面側部と呼ばれています)は、丘のように盛り上がっています。

 葉状体の背面に毛などは無く滑らかです(上の写真)。

 上は胞子です。 遠心面の網目は径上で7~8個で、求心面の網目は不完全です。
 (遠心面・求心面についてはこちらで解説しています。)

◎ ハタケゴケはこちらにも載せています。

2021-12-05

カサゴケモドキ

 

 写真はカサゴケモドキ Rhodobryum ontariense で、東京都あきる野市養沢で 2021.11.29.に撮影しました。 平凡社によると、本種は石灰岩地を含む落葉樹林下に生えるとあり、撮影場所も、東約500mと西約1kmに鍾乳洞があり、近くにも石灰岩らしい岩が見られました。

 長い匍匐茎があり、そこから立ち上がる直立茎の茎頂に大形の葉が集中してついています。 1茎につく葉の枚数は30~40枚、1枚の葉の長さは1cm近くあります。

 葉は倒卵形~楕円形で、葉先は広く尖り、葉縁の中部以下は強く反曲しています。 葉の上部には歯があります。

 葉縁の歯は単生です(上の写真)。

 葉身細胞は狭六角形です(上の写真)。 長さは 40~80μmで、平凡社の 30~50μmより少し長いようです。

 上は葉の中肋付近の横断面で、中肋の下部にステライドがあります。

 上は葉の中央付近の葉縁の横断面で、葉縁は強く反曲しています。

 多くの株で、傘の中央がゴチャゴチャしていました(上の写真)。 この部分を取り出して顕微鏡で観察すると・・・

 造精器(中は既に空)と側糸がありました(上の写真)。

こちらでは本種をカサゴケやツクシハリガネゴケと比較しています。