2020-06-20
ナガハシゴケ ② 蒴を中心に
上は、手前に少しシノブゴケの仲間(たぶんミジンコシノブゴケ)が写っていますが、ナガハシゴケ Sematophyllum subhumile です。 ナガハシゴケは4日前に載せたばかりですが、蒴歯が観察できるまでに成熟した蒴がありましたので、4日前の記事を葉を中心に書き改め(こちら)、蒴に関しての観察結果をこちらにまとめることにしました。
上はナガハシゴケの蒴歯(一部)を外側から撮っています。 外蒴歯と内蒴歯が交互にきれいに並んでいます。 本種の1つの蒴の蒴歯の数は、外蒴歯と内蒴歯それぞれ16本ずつですが、上の写真は光が通るように中の胞子を除去する目的で蒴を2分した片方ですので、ほぼ半数の蒴が写っています。
ところで、平凡社の図鑑では、Sematophyllum(ナガハシゴケ属)の特徴の1つとして、蒴壁の細胞は厚角と書かれています。 しかし、上の写真で厚角と言えるでしょうか。
上は蒴の外壁を構成している細胞だけに焦点が合うようにして撮った写真です。 少なくとも蒴の外壁を構成している細胞は厚角であるとは言えないでしょう。 そこで蒴壁の内側を観察すると・・・
上が蒴の内壁の顕微鏡写真です。 倍率は外壁と同じです。 たしかに内壁を構成している細胞は厚角です。 同じ蒴壁を構成している細胞が外側と内側でこんなにも違うというのも驚きです。 いったい蒴壁は何層の細胞でできているのか、もう少し若い蒴を縦断してみました。
上は蓋のついている少し若い蒴の縦断面です。 下は上の赤い四角で囲った部分の拡大です。
蒴壁は3~4細胞層のようです。 そして外壁を構成している細胞を除くと、細胞壁は厚角のようです。
(2020.6.15. 兵庫県 六甲山)
◎ こちらには蒴歯の見えているナガハシゴケのフィールド写真を載せています。