2015-11-24

イクビゴケ(ミギワイクビゴケ騒動)


 ノコギリコオイゴケ(上の写真の右端には花被も見えます)に囲まれてイクビゴケがありました。 イクビゴケは大きな蒴に接して小さな雌苞葉があり、その外側を中肋が長く芒状に突出した細胞が取り囲み、さらにその外側に微突頭の葉があります。


 1枚目の写真のイクビゴケは胞子を出し終えていました。 胞子を作ることは、その株にとってたいへんな負担のようで、葉はとても傷んでいましたが、上の写真の上が雌包葉、右が茎の上部につく葉で、左下が茎の下部につく(=いちばん外側に位置する)葉です。

 ところで、日本でよく使われているコケの詳しい図鑑として、平凡社の「日本の野生植物・コケ」と、保育社の「原色日本蘚苔類図鑑」があります。 イクビゴケ属で普通種はイクビゴケだけですが、平凡社の図鑑ではイクビゴケ属として8種の名前が挙げられていますので、一応確認をと普通葉の細胞も調べてみました。 下がその写真です。


 それぞれの細胞から1つの円いものが上に突き出しているように見えます。 パピラです。 平凡社の検索表では、「葉身細胞には各1個の高いパピラがある」のはミギワイクビゴケとなります。
 ミギワイクビゴケはとても珍しいコケで、環境省レッドデータの絶滅危惧Ⅰ類ですし、新種として発表されたのが1984年(出口博則:植物研究雑誌59(4))と比較的最近のことでもあり、平凡社の図鑑では検索表のみで、ミギワイクビゴケに関するその他の記載が無く、保育社には検索表にも載せられていません。 そこでミギワイクビゴケに詳しい方にお聞きしたところ、論文(出口)のコピーと共に、下のような趣旨のコメントをいただきました。
 ミギワイクビゴケは、葉細胞に1個の高いパピラを持ち、雌苞葉の葉身の肩にはシリアが出ず、雌苞葉の芒が平滑であるという特徴があり、この3つの特徴の一部を持つイクビゴケがあるとのことです。 またミギワイクビゴケの生育環境は、湿度の高い渓流沿いの、土壌のごく薄く堆積したか、またはその堆積のない岩壁上とのことで、私の今回みつけた山の砂地の斜面とは大きく異なります。
 じつはほんの少しですが、雌苞葉でシリアらしきものも確認しており(下の写真)、生育場所からしても、どうやら普通種のイクビゴケ( Diphyseium fulvifolium )ということになりそうです。


 いずれにしても、上に書いたようにこの時期は葉の傷みがひどく、蒴も胞子を出してしまった後で、詳しい観察は時期を改めて行う必要がありそうです。

(2015.11.6. 堺自然ふれあいの森)

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