2025-07-31

ヒメコバチ科 Euplectrus sp. の2種

  下はPart1の2013年1月の20日と27日に載せていたものを、大幅に書き換え、こちらに引っ越しさせたものです。


 上はヒメコバチ科の Euplectrus sp. だと思います。 11月30日に大阪城公園で撮影しました。 体長は2.2mmでした。
 Wikipedia(英語版)によると、Euplectrus属は世界的に広く分布するハチですが、種間の形態的な違いはわずかで、識別には困難が伴う属です。 他の属とは、後脛節の距がとても長いことや、前伸腹節(propodeum)の中央に一本の強い稜があることで区別できるのですが、これは帰宅後に調べたことで、上の写真ではどちらの特徴もよく分かりません。
 Euplectrus属のハチは、チョウ目の幼虫に外部寄生します。 寄生されたイモムシは食餌や活動を続けますが、産卵時に注入された毒液によって成長と脱皮は止まり、ハチの幼虫がサナギになる頃に死んでしまいます。

 下も上と同じEuplectrus属の別種でしょう。 12月21日に堺自然ふれあいの森で撮影しました。 これも体長は2.2mmでした。


 下も一見よく似ていて、たぶんヒメコバチ科でしょうが、背面の様子も違いますし、産卵管が突き出しています。 たぶん別の属でしょう。 体長は 1.7㎜、2013年1月23日に堺市南区岩室で撮影しました。




2025-07-30

Heterospirus sp. (コマユバチ科オナガコマユバチ亜科)

※ Part1の 2012年12月21日からの引っ越し記事です(追記しています)。 



 写真は2012年12月21日に堺自然ふれあいの森で撮影したコマユバチ科の一種で、体長は 2.5mm、翅端までは 3.2mmでした。 しかしそれ以上は分からず、藤江さんに見ていただいたところ、腹部背面や後翅翅脈などが見えないため、なかなか難しいが、顔の形状からはオナガコマユバチ亜科かコマユバチ亜科あたりに絞れ、下口隆起線や後頭隆起線(下記 注)がありそうなところから、おそらくオナガコマユバチ亜科で、Heterospirus属あたりかもしれないとの回答いただきました。

(注)
・ 下口隆起線(Hypostomal carina)
 頭部の後方、口の近くにある隆起線で、大顎の後方の関節部から後頭孔(foramen magnum)に向かって走る線です。口の周囲の構造を補強したり、筋肉の付着点になったりします。
・ 後頭隆起線(Occipital carina)
 頭部の後ろ側にある半円状の隆起線で、頭頂部(vertex)と複眼の後縁、後頭孔の間を囲むように走っています。この線は、頭部の後方の輪郭を形成し、分類学的にも重要な特徴です。


2025-07-29

ハラビロクロバチ科 Leptacis属の一種

 ※ Part1の2013年12月28日からの引っ越し記事です。

 2013年12月25日に堺自然ふれあいの森のヤツデの葉の裏で見つけたスマートな蜂、体長は、体を真っ直ぐにすれば、1.7mmほどになります。 見慣れない姿で、最初は調べる手がかりも思いつかなかったのですが、頭を思いっきり下げている姿や、脚の脛節の端が膨れているところなどから、黒くはありませんがハラビロクロバチ科かもしれないと思い、検索してみると、tukikuiさんのところ(こちら)に似たものが載せられていました。 この記事へのコメントを寄せられたKurobachiさんによれば、この属はたくさんの種を含んでいるそうで、同種かどうかは分かりませんが、同じ属であることは間違いないでしょう。 タマバエ類の幼虫に寄生するそうです。
 撮影を始めるとすぐに動き出したので、家に持ち帰りました。 しばらく冷凍庫に入れて動きを鈍くして撮影するつもりが、細い体には無理だったようで、短時間で絶命してしまいました。 それを横から撮ったのが下の写真です。

 小楯板の先端には1本の鋭い棘があります。 前脚と絡み合っていて分かりにくいのですが、触角は長く、上の写真ではZ状に折りたたまれています。 翅には毛が生えています。

 上の写真では、口のあたりがよく分かりませんし、触角の出ている所ももう少し分かりやすくならないかと思い、ピンセットで絡み合っていた前脚と触角を分け、CombineZP で深度合成してみたのが下です。 レンズは手元にあった28mm広角レンズ( もう少し焦点距離の短いレンズがほしいところですが・・・)を逆向きにし、カメラとの間に接写リング(PK-13)を挟みました。


2025-07-28

キコミミゴケ(ヤマトコミミゴケとの比較)

 写真はキコミミゴケ Lejeunea flava のようです。 分布は本州以南です。 7月25日に載せたヨシナガクロウロコゴケに混じっていたもので、当初はヤマトコミミゴケ(以下ヤマト)かと思ったのですが、どこか違うような気がしてM氏にお聞きしました。
 キコミミゴケは黄緑色で柔らかい群落を形成し、ヤマトは行儀の悪い群落(私のイメージ)で、きらきらした光沢があるのですが、わずか2本の植物体からでは、群落の様子は分かりません。

 上は腹葉です。 本種の腹葉は、背片よりは小さいものの、茎径の3~4倍幅と大きく、腹片が隠れてしまう幅ですし、どちらかと言えば幅より高さの方が高い傾向があります。(ヤマトの腹葉は高さより幅が広い。)


 上の2枚は腹片です。 歯牙が1細胞なのはヤマトなどと同じですが、ヤマトほど腹片の変異は大きくありません。

 上は葉身細胞です。 油体は各細胞に3~15個です。 ヤマトの油体は各細胞に 20~50個あります。

◎ キコミミゴケはこちらにも載せています。

2025-07-27

パンダアリ

 上は大阪市立自然史博物館で現在開催中の特別展「昆虫MANIAC」で撮影したパンダアリです。 虫ピンの太さからも分かるように、小さな昆虫です。 撮影はガラスに触れないように注意しながら接写し、トリミングしています。
 このパンダアリ、「パンダみたいなアリ? 実はハチ」のキャッチコピーもあって注目されていますが、頭部にこんなに毛があることもおもしろく、少し調べてみました。
 パンダアリの学名は Euspinolia militaris で、南米チリの沿岸部に分布するアリバチ科の1種です。 アリ(アリ科)もハチ(ハチ目)の1グループですが、本種はアリ科ではありませんから、たしかにアリではありません。
 食性は、親は花の蜜や小さな昆虫で、幼虫は親が産卵した地中性のハチの幼虫などに外部寄生します。
 アリバチ科(Mutillidae)のハチは、オスには翅がありますが、メスには翅がありません(だからアリのようにみえます)。 アリバチ科のハチは体に鮮やかな色を持つものや目立つ模様を持つものが多いのですが、護身用に強力な毒針を持っていて、体の色や模様は捕食者に警告する警戒色のようです。 また、体の一部をこすり合わせて高周波音を発し、捕食者を追い払うこともします。
 アリバチ科のハチは全世界に分布しますが、特に熱帯地域で多様性が高く、日本でも九州、沖縄、奄美諸島、屋久島などの南西諸島で多くの種が確認されています。

2025-07-26

ヨシナガクロウロコゴケ

 写真はヨシナガクロウロコゴケ Acanthocoleus yoshinaganus でしょう。 これも毎月第4火曜日に開かれているオカモス関西の顕微鏡観察会にK氏が持参されたコケで、大台ヶ原のふもとで採集されたものです。 また同定にはM氏の力をお借りしました。
 学名は、平凡社(2001)では Dicranolejeunea yoshinagana となっていますが、片桐・古木(2018)では上記のように変更されています。 acantho- はギリシャ語の「棘」を、-coleus はラテン語の「袋」を意味し、花被の側稜上に刺があるところからでしょう。 また、和名は本種を初めて探集された高知の吉永虎馬氏を記念したものです。
 背片は全縁で円頭~鈍頭、長さは約1㎜です。 分布は平凡社では本州(宮城県以南)~九州の落葉樹林帯の湿岩上となっています。


 腹葉は全縁で円形、円頭ですが、先が少し凹んでいるものもありました(上の2枚の写真)。


 腹片は切頭で、1細胞性の2歯があります(上の2枚の写真)。

 葉身細胞は薄壁で、赤い円で囲った所などで中間肥厚が見られ、大きなトリゴンがあります。

2025-07-25

ナガケビラゴケ

 昨日載せたタカキクラマゴケモドキにナガケビラゴケ Radula fauriana がついていました(上の写真)。 ブナ帯以上の樹幹などに着生するケビラゴケです。


 標本であるため、枝先の折れた枝も混じっていますが、小さな葉をつけた短い枝があちこちから出ています(上の写真)。 これが本種の特徴です。

 背片は円頭で、腹片は背片の2/3ほどの長さです(上の写真)。

 葉身細胞は薄壁でトリゴンが発達しています(上の写真)。

2025-07-24

タカキクラマゴケモドキ

 上は7月21日のオカモス関西の顕微鏡観察会にSさんが持参された標本で、検討の結果、タカキクラマゴケモドキ Porella oblongifolia だと思います。 本種の分布は、平凡社では本州(埼玉県以西)、四国の石灰岩地となっていて、上が採集されたのは剣山の石灰岩地です。

 平凡社の検索表では腹片の様子が大切になってきますので、腹片から見ていきます。 少し小さいのですが、上の写真では腹片と背片のつながりは弱いようです。

 多くの腹片を総合的に見ると、腹片の腹縁基部が幅広くなっているとは言えません(上の写真)。

 上は腹片を見やすくするために背片の一部と腹片を取り除いています。 背片と腹片はほぼ1点でしかつながっていないため、背片を取り除いても腹片は茎に残ります。 また、背片基部は長く下延しています。

 上は背片です。最初や2枚目の写真は十分に濡らした後で水を拭き取って撮影しているのですが、背片の先は内曲しています。 しかしこれは標本が水を吸って元の姿に戻るのが遅いためだと考えられ、背片を茎から外して水で封じた上の写真では背片の先の内曲は見られません。
 背片は細長く、長さは幅の2倍以上あります。 種小名の oblongifolia は oblongi(長楕円形の)+folia(葉)ですから、この背片の様子からでしょう。 円頭の葉先には数個の長い歯があります。

 上は腹葉です。 最初や2枚目の写真の腹葉は反り返っているため、茎から外した上の写真とは葉の形は違ってみえます。

 上は葉身細胞です。

2025-07-23

(トゲ)アイバゴケ


 写真はアイバゴケ Plicanthus birmensis またはトゲアイバゴケ P. hirtellus だと思います。 平凡社などでは別種として扱われていますが、分布も重なることが多く、中間的な植物体も多いことなどから、同一種だろうとされています(下記参考文献)。
 属名も平凡社の Chandonanthus から変更されています。 ちなみに、Plica は折り目を、 anthus は花を意味しますが、たぶん花被が多稜であることからだと思います。
 写真の植物体は、毎月第4火曜日に開かれているオカモス関西の顕微鏡観察会にK氏が持参されたコケで、7月20日に大台ヶ原のふもとで採集されたものです。 本州(宮城県以南)、四国、九州に広く分布していますが、産地は限られています。
 植物体は緑褐色です。 葉は基部まで不等に3裂していて大中小の3枚の葉があるのとほとんど変わらず、それが重なってついているため、実体双眼顕微鏡で見ても、どのようになっているのか、よく分かりません。 仮根はあまりありません。

 上は葉(やや左下)と腹葉(右上)です。 葉は上記のように不等に3裂していて、もっとも大きいのが背側の裂片です。 葉も腹葉も葉縁に細長い歯があります。

 葉身細胞は矩形で、壁が波状に肥厚し、トリゴンが大きく、油体は球形で微粒の集合です(上の写真)。 顕微鏡ではどうにか細胞表面のベルカが確認できるのですが、それとわかる写真は、私の顕微鏡とカメラでは無理でした。

【参考文献】
天本匡宥・西畑和輝・井上侑哉・山口富美夫:日本産アイバゴケ属2種の分類学的研究.蘚苔類研究 12(3), 2020.

2025-07-22

ハチ目(膜翅目)の掲載種一覧(分類別)

無印は Part2に、★印は Part1に掲載しています。 また☆印は写真のみの掲載です。
なお、主な上科名を系統樹として示した図をこちらに載せています。

====【OUTLINE】============
ハバチ亜目
  ヒラタハバチ上科
  ナギナタハバチ上科
  ハバチ上科
  クビナガキバチ上科
  キバチ上科
  クキバチ上科
  (捕食寄生の始まり)
  ヤドリキバチ上科
ハチ亜目(細腰亜目)
 ヤドリバチ類
  ヒメバチ上科
   ヒメバチ科
   コマユバチ科
  ヒゲナガクロバチ上科
  クロバチ上科
  ハラビロクロバチ上科
  コバチ上科
  タマバチ上科
  ヤセバチ上科
  ツノヤセバチ上科
  カギバラバチ上科
 有剣類
  セイボウ上科
  スズメバチ上科
   スズメバチ科
   クモバチ科
   ツチバチ科
   アリ科
      など
  ハナバチ(アナバチ群)
  ハナバチ(ハナバチ群)
   ハキリバチ科
   ミツバチ科
      など
==========================

DETAILS

ハバチ亜目
  ヒラタハバチ上科
0101 ヒラタハバチ科
     ヒラタハバチ科の1種

  ナギナタハバチ上科
0201 ナギナタハバチ科

  ハバチ上科
0301 マツハバチ科
     マツハバチ科の1種

0302 コンボウハバチ科
     コンボウハバチ科の1種

0303 ミフシハバチ科
    ★アカスジチュウレンジ
     ルリチュウレンジ

0304 ハバチ科
    ★キコシホソハバチ
     キモンハバチ属の1種
    ☆クシヒゲハバチ(オス)
     セグロコシボソハバチ
     ツマグロハバチ
    ★ニホンカブラハバチ
     ハチガタハバチ

  クビナガキバチ上科
0401 クビナガキバチ科

  キバチ上科
0501 キバチ科
     ヒラアシキバチ(メス)

  クキバチ上科
0601 クキバチ科

  ヤドリキバチ上科
0701 ヤドリキバチ科

ハチ亜目
 ヤドリバチ類
  ヒメバチ上科
0801 ヒメバチ科
    ☆ヒメバチ科の一種
    ☆ヒメバチ科の一種
    ☆ヒメバチ科の一種
     ヒメバチ科の一種
     Ichneumonidae sp. 
     Eriborus sp. ?
    ★Lissonota sp. CH
    ☆トガリヒメバチ亜科の一種
     トガリヒメバチ亜科の一種
    ☆シロスジヒメバチ
    ★マダラヒメバチ
    ★キオビコシブトヒメバチ CH
     アメバチ亜科の一種
    ★Ophion sp.  CH
    ☆サキグロホシアメバチ
     ムラサキウスアメバチ
     クモヒメバチの一種 Zatypota maculata 
     クロヒゲフシオナガヒメバチ
    ★ヒラタヒメバチの一種
    ★ミノオキイロヒラタヒメバチ
     エゾオナガバチ
     オオホシオナガバチ

0802 コマユバチ科
     コマユバチ科の一種
     ハエヤドリコマユバチ亜科 Alysiili族の一種 
     ウマノオバチ
     キタカミキリコマユバチ
    ☆ヨコハママダラコマユバチ
     オナガコマユバチ Heterospirus属の一種? 
    ★オナガコマユバチ Spathius属の一種 CH
     Spathius sp. 
    ★ツヤコマユバチ亜科 Opius sp.
     スマトラカモドキバチ
     クロヒゲアカコマユバチ(?)
     チビコマユバチ亜科 Blacus属の一種?
     コウラコマユバチ亜科 Phanerotoma属の一種
     ヒゲナガコウラコマユバチ
     ハラボソコマユバチ亜科 Meteorus sp.
     サムライコマユバチ亜科 Cotesini族の一種
     サムライコマユバチ亜科の一種の寄主操作

  ヒゲナガクロバチ上科
0901 ヒゲナガクロバチ科

  クロバチ上科
1001 ハエヤドリクロバチ科
    ★ハエヤドリクロバチ科の1種 CH
     ハエヤドリクロバチ科の1種

  ハラビロクロバチ上科
1101 タマゴクロバチ科
     Trissolcus japonicus

1102 ハラビロクロバチ科
    ★Leptasis
    ★Synopeas
    ★ヘリカメタマゴクロバチ属の1種

  コバチ上科 
1201 イチジクコバチ科
     イヌビワコバチ

1202 ヒメコバチ科
    ★キイロホソコバチ HC
    ★Apleurotropis sp.
     Chrysocharis属の一種
     Deutereulophus sp. 
    ☆Elachertus属
    ★Entedon nomizonis のオス CH
    ★Entedon nomizonis のメス CH
     Eulophus abdominalis
     Eulophus abdominalis の蛹
    ★Euplectromorpha nigromaculatus CH
     Euplectrus属2種 
    ★Pediobius atamiensis
     Sigmophora brevicornis
     Sympiesis属の一種
    ★Tetrastichinae亜科の一種
     Tetrastichinae亜科の1種
     ヒメコバチ科の一種

1203 ノミコバチ科
    ★Elasmus sp. CH

1204 ツヤコバチ科
    ★Aphelinus japonicus CH
    ★ツヤコバチ科の一種

1205 ホソハネコバチ科
    ★ホソハネコバチ科の一種 CH

1206 トビコバチ科
     アブラニジモントビコバチ
    ★イボタロウオスヤドリトビコバチ
    ★カメムシタマゴトビコバチ
    ★トビコバチ科の一種 HC
     トビコバチ科の一種
     トビコバチ科の一種
     ニジモントビコバチ
     ハネナガトビコバチ
     ヒラタカイガラキイロトビコバチ

1207 コガネコバチ科
     アオムシコバチ
    ★Acrodisoides属
     Acrodisoides属
    ★Mesopolobus属 CH
    ★Moranila sp. CH
    ★Moranila sp. CH

1208 マルハラコバチ科
    ★Perilampus属の1種 CH

1209 シリアゲコバチ科
     シリアゲコバチ(オス)

1210 カタビロコバチ科
     カタビロコバチ科の1種
    ★キイロカタビロコバチ

1211 アシブトコバチ科
    ☆アカアシブトコバチ
    ★アシブトコバチ科の1種
    ☆キアシブトコバチ

1212 オナガコバチ科
     イスノキモンオナガコバチ
     イヌビワオナガコバチ
    ★オナガコバチの1種
    ★ニッポンオナガコバチ

1213 ナガコバチ科
     Anastatus属の一種
     Neanastaus albitarsis
    ★ナガコバチ科の一種

  タマバチ上科
1301 タマバチ科
    ★タカチホヒラタタマバチ
    ★ナラメリンゴタマバチ CH
    ★タマバチ科の1種 CH
    ★マスダアラカシタマバチ CH

1302 ツヤヤドリタマバチ科
    ★ツヤヤドリタマバチ科の1種 CH

  ヤセバチ上科
1401 ヤセバチ科

  ツノヤセバチ上科
1501 ツノヤセバチ科
     ツノヤセバチ科の一種

  カギバラバチ上科
1601 カギバラバチ科

 有剣類
  セイボウ上科
1701 アリガタバチ科
    ★アリガタバチ科の一種 CH

1702 セイボウ科
     オオセイボウ
     ナミハセイボウ
     ミドリセイボウ

  スズメバチ上科
 1801 スズメバチ科
    スズメバチ亜科
     ☆オオスズメバチ
     ☆キイロスズメバチ
     ★クロスズメバチ
      コガタスズメバチ
     ★チャイロスズメバチ
     ★ヒメスズメバチ
     ☆モンスズメバチ
    アシナガバチ亜科
     ★キアシナガバチ
     ☆キボシアシナガバチ
     ☆セグロアシナガバチ
     ★ムモンホソアシナガバチ
      ヤマトアシナガバチ
    ドロバチ亜科
      エントツドロバチ(オオカバフスジドロバチ)
       ★巣作り
       ★狩り
     ★オオフタオビドロバチ 
     ★カタグロチビドロバチ
     ☆カバオビドロバチ
      クロスジスズバチ
      サイジョウハムシドロバチ
     ☆スズバチ
     ☆ナミカバフドロバチ
     ★フカイドロバチ
      ミカドドロバチ?
     ☆キボシトックリバチ
      ミカドトックリバチ
      ムモントックリバチ(メス)

1802 コツチバチ科
     コツチバチ科の一種

1803 アゴバチ科

1804 クモバチ科
    ★アオスジクモバチ CH
    ☆オオモンクロクモバチ(オオモンクロベッコウ)
    ★キバネトゲアシクモバチ CH
     スギハラクモバチ
     ツマアカクモバチ
    ★ナミモンクモバチ(メス)
    ☆ナミモンクモバチ(オス)
    ☆ベッコウクモバチ(メス)
     ベッコウクモバチ(オス)

1805 アリバチ科
     パンダアリ
    ★アリバチ科の一種(オス) CH
     ミカドアリバチ

1806 ツチバチ科
     アカスジツチバチ
    ☆オオモンツチバチ(メス)
    ★キオビツチバチ
     キンケハラナガツチバチ
    ☆コモンツチバチ

 1807 アリ科
    ノコギリハリアリ亜科
    カギバラアリ亜科
    ハリアリ亜科
    クビレハリアリ亜科
    ヒメサスライアリ亜科
    ムカシアリ亜科
    クシフタフシアリ亜科
    フタフシアリ亜科
     ☆アシナガアリ
      アミメアリ
      ウロコアリ
     ☆キイロシリアゲアリ
      シワクシケアリ
      テラニシシリアゲアリ
      トビイロシワアリ
     ★ハリブトシリアゲアリ CH
     ☆ヒメアリ
      ムネボソアリ
    カタアリ亜科
      シベリアカタアリ
      ヒラフシアリ
    ヤマアリ亜科
      アメイロアリ
     ★ウメマツオオアリ VCH
     ★クロオオアリ CH
     ☆クロクサアリ?
     ☆クロヤマアリ
     ★チクシトゲアリ
      トゲアリ
      トビイロケアリ
      ヒラズオオアリ(女王アリ)
     ★ヒラズオオアリ(小形働きアリ) CH
      ムネアカオオアリ
      モリシタケアリ?

  ハナバチ(アナバチ群)
1901 セナガアナバチ科

1902 アナバチ科
    ☆アカアシハヤバチ(アカアシトガリアナバチ)
     クロアナバチ
    ★コクロアナバチ CH
     サトジガバチ
    ★ヤマジガバチ
     ミカドジガバチ
     アメリカジガバチ
    ★ルリジガバチ CH
     トゲムネアナバチ

1903 ギングチバチ科
     ナミコオロギバチ

1904 ドロバチモドキ科
    ☆キアシハナダカバチモドキ
     ドロバチモドキ科の一種

1905 フシダカバチ科
    ★ナミツチスガリ
     マルモンツチスガリ

  ハナバチ(ハナバチ群)
2001 ムカシハナバチ科
     メンハナバチ亜科の一種

2002 ヒメハナバチ科
     ウツギヒメハナバチ
     コガタウツギヒメハナバチ
    ☆チビヒメハナバチ

2003 コハナバチ科
     アカガネコハナバチ(メス)
    ★アカガネコハナバチ(オス) CH
     ヤドリコハナバチ属の一種

2004 ハキリバチ科
    ★オオハキリバチ
     シロオビキホリハナバチ
    ★スミゾメハキリバチ CH
     ツツハナバチ
     ツルガハキリバチ
    ★トモンハナバチ
    ★ネジロハキリバチ
     ハラアカヤドリハキリバチ
     マイマイツツハナバチ
     ヤノトガリハナバチ

2005 ミツバチ科
     イワタチビツヤハナバチ
    ★キオビツヤハナバチ(メス)
     キオビツヤハナバチ(オス)
    ★キマダラハナバチの一種
    ☆キマダラハナバチの一種
    ★ダイミョウキマダラハナバチ
    ★ルリモンハナバチ
    ★ニッポンヒゲナガハナバチ CH
    ★オオマルハナバチ
    ☆コマルハナバチ(メス)
     セイヨウオオマルハナバチ
     エゾオオマルハナバチ
    ★トラマルハナバチ
    ☆キムネクマバチ
     タイワンタケクマバチ
    ☆セイヨウミツバチ
    ☆ニホンミツバチ

ハチの系統とルリチュウレンジ

 ハチと聞くと刺されると怖がる人が多いのですが、そのような怖いハチは、ほんの一部のハチです。 

 上は現在大阪市立自然史博物館で開催中の特別展「昆虫MANIAC」で掲示されていたハチの系統図です。 スズメバチやアシナガバチはスズメバチ(スズメバチ科)にまとめられています。
 上の系統図をさらにまとめて大きく見ると、幼虫の餌は、植物の葉や材 → 動きの乏しい虫など(卵や幼虫)への寄生 → 動きのある虫などへの寄生や捕食 → 植物の花粉 というように変化しています。 スズメバチやアシナガバチは動きのある虫などを捕食できるように、また社会生活をするために巣などを守る必要から、産卵管が変化した強力な毒針を持ち攻撃的な側面もありますが、繰り返しますがそんなハチはごく一部です。
 多くのハチは何も恐れることは無いのですが、その1例として、ここでは系統上初期に現れた、ある意味ハチの“原型”であるハバチを、ルリチュウレンジを例に取り上げます。 なお、ルリチュウレンジについては、Part1の2012年8月23日の記事の引っ越しを兼ねています。
 「ハバチ」は「葉蜂」で、幼虫は葉を食べて育ちます。 卵は産卵管を葉に差し込んで産み付けられますので、もちろん産卵管が変化した毒針はありません。
 産卵の様子は【こちら】に載せています。

 上がルリチュウレンジの幼虫です(2010年6月27日撮影)。 ルリチュウレンジの幼虫はツツジ類の葉を食べて育ちます。 葉をもりもり食べて育つという生活が同じところからチョウやガの幼虫と似ていますが、違い(見分けるポイント)は【こちら】に載せています。

 そして上が成虫です(2012年8月16日撮影)。 ハチといえば腰のくびれを連想しがちですが、これは腹部を自由に動かして虫の急所に正確に針を差し込むための形態で、そのような行動をしないハバチなどでは、腰のくびれは見られません。(進化的には腰のくびれができたから、虫の急所に正確に針を差し込めるようになった。)
 なお、本種の本来の色は黒っぽいのですが、上の写真は、金属光沢を伴った瑠璃色を強調するため、ハイキーぎみに撮っています。

 ルリチュウレンジはミフシハバチ科に分類されています。 「ミフシ」というのは、この仲間の触角が3節からできていることによります。 写真で分かるように第3節が第1・2節に比べてとても長くなっているのが特徴です。

 ルリチュウレンジは年に3~4回発生し、成虫は4月~10月頃に見られます。 上に書いたように、幼虫はツツジ類の害虫で、地面に降りて土の中でサナギになります。 越冬は、サナギの状態で過ごします。

2025-07-21

ヒラアシキバチ

 以下は Part1の 2012.9.22.と 2012.11.22.との記事を合わせた引っ越し記事です。

 ハチの進化を見た場合、原始的なハチの幼虫の餌は、葉を食べるハバチの仲間や、材を食べるキバチの仲間など、植物組織です。
 キバチ科は針葉樹を利用するキバチ亜科と広葉樹を利用するヒラアシキバチ亜科に分けられます。 ヒラアシキバチ Tremex longicollis(ヒラアシキバチ亜科)は、卵を枯れたエノキの辺材部に産み付け、幼虫は辺材を食べて育ち、材の中で羽化した成虫は幹に穴を開けて出てきます。


 上がヒラアシキバチです。 アシナガバチやスズメバチなどの狩蜂の顔の獰猛さは感じられず、穏やかな顔に思えました。 そんなヒラアシキバチの産卵に出会いました。


 硬い木に産卵管を差し込むのですから、たいへんなようです。 体を左右にねじりながら、徐々に産卵管を幹に差し込んでいきます(上の写真:2012.9.22.枚岡公園にて撮影)。
 上の2枚の上の写真で、腹部腹面の中央付近から出て木に差し込まれている黒いものが産卵管で、腹部の端から後ろに突き出ているのは、産卵管をしまっておく産卵管鞘です。
 産卵の様子を見ていると、産卵管はゆっくりと錐をもむように差し込まれていきます。 産卵管を差し込んだ所からは白っぽい木屑がこぼれ出ています。

 当日は何頭かのヒラアシキバチの産卵を見ましたが、そのうちの1頭は羽化したばかりのようで、体には木屑がついていて、まだ飛び立つこともできないようでした。 しばらく見ていると、そのヒラアシキバチが産卵管を幹に差し込みはじめましたが、周囲にはオス(産卵管鞘は無いはずです)らしき姿は見当たりませんでした。 ヒラアシキバチは産雌性単為生殖を行っているとされています。 ところが・・・


 2012年11月10日、ヒラアシキバチが産卵している木で、よく似ているが、頭部が黒く産卵管の無いハチがいました。 気温が低いためか、飛び立つ気配はありません。 オスではないかと思い、持ち帰って撮影したのが上の2枚の写真です。
 後日、大阪市立自然史博物館のM学芸員にこの蜂をお見せしたところ、ヒラアシキバチと同じ属に数種いるが、この時期なのでヒラアシキバチだろうということでした。 ヒラアシキバチの発生する木全体をネットで包むなど、徹底した調査をすると、ごくたまにオスが見つかることがあるが、ごく少数なので、生殖活動には関係していないのではないか、ということでした。 ハチはM学芸員にお渡ししました。

 ところで、ヒラアシキバチが産卵している枯れたエノキには、産卵管が差し込まれたままちぎれた腹部があちこちにたくさん残されています(下の写真)。

 古いものでは産卵管だけが残っている場合もありますが、新しいもののほとんどが、産卵管の位置から後ろが残されています。 たぶん差し込んだ産卵管は簡単には抜けないので、産卵途中で捕食者に襲われたのでしょう。

 このヒラアシキバチが産卵していた枯れたエノキにはミダレアミタケ Cerrena unicolor(下の写真)が生えています。

ミダレアミタケ 2013.6.27.枚岡公園

 ヒラアシキバチの産卵管の付け根には1対の菌嚢(きんのう)があり、その中にはミダレアミタケの胞子が入っています。 菌嚢の近くにはミューカスと呼ばれる粘液の入った袋もあり、ヒラアシキバチの産卵時には、この粘液と菌嚢に貯えた胞子とが混ざり、木に接種されるしくみになっています。 胞子から発芽したミダレアミタケの菌糸は材を分解し、ヒラアシキバチの幼虫が利用しやすくしてくれます。 蜂と菌の共生です。
 このミダレアミタケは、枯木内にいるヒラアシキバチの幼虫に寄生するオナガコバチを紹介したブログ(こちら)の4枚目の写真にも写っています。